年金相談
障害年金・遺族年金の基礎知識
「年金」というと、お年寄りがもらう老後の年金というイメージから、若い方には具体的なイメージがしづらい制度かもしれません。
日本の公的年金には、国民年金、厚生年金それと公務員などが加入している共済年金があります。その制度それぞれに、“老齢年金”、“遺族年金”そして“障害年金”といった種類があります。
老齢年金は一定の年齢になった場合、遺族年金は家族の誰かが亡くなった場合、障害年金は病気やケガで一定の障害になった場合に受け取れる年金なのです。
障害年金については、一定の障害を負った方であれば、若い世代でも受給できる可能性のある重要な年金です。しかし、障害年金は、どんな障害状態でも受給できる訳ではありません。保険料を一定以上納めていない場合も受給できない場合もあります。
原因となる病気やケガなどが多岐にわたっているために、「一定の障害状態」である基準もそれだけ多く存在している点が挙げられます。
また、医療機関の受診証明や診断書など、時間が経つと入手の難しい書類が必要です。
障害年金制度を的確に理解し、ポイントを押さえた準備を進めることが大切になってきます。
3つの受給要件
障害年金を受給するためには、
3つの条件を満たしている必要があります。
初診日 | 保険料納付 | 障害認定日 |
- 【初診日】
初診日とは、障害の原因となった傷病で初めて医師の診療を受けた日です。 - 【保険料納付要件】
初診日の前日において、初診日のある月の前々月までの加入期間のうち、保険料納付済期間または免除期間(学生納付特例・若年者納付猶予期間を含む)が3分の2以上ある場合は受給できます。または、初診日の前日において、初診日のある前々月までの1年間に、保険料の未納が無い場合も特例として認められています。 (ただし、特例については初診日に65歳未満であること) - 【障害認定日】
初診日から1年6ヵ月経過した日、あるいは1年6ヵ月経たない間に傷病が治った日をいいます。この日の障害状態によって、障害等級等が決まります。また、施術によっては、1年6ヵ月経過前でも傷病が治った(症状が固定した)日を障害認定日と認める特例があります。
障害認定日の特例
施術 | 障害認定日とされる日 |
---|---|
人工透析療法 | 療法開始から3カ月を経過した日 |
人工透析療法 | 施術の行われた日 |
心臓ペースメーカー | 装着日 |
人工弁装着 | 装着日 |
人工肛門増設 | 施術の行われた日 |
切断・離断 | 切断・離断の日 |
切断・離断(障害手当金) | 創面(傷口)治癒日 |
在宅酸素療法 | 療法開始日 |
脳血管障害による運動機能障害 | 6ヵ月経過日以後の症状固定日 |
障害年金のポイント
年金の種類
障害年金は、初診日に加入していた年金制度により、年金の種類が異なってきます。
初診日に国民年金(自営業、主婦、学生など)に加入していた場合は、その病気・ケガの程度により1級または2級の障害基礎年金を受給することができます。
- 初診日に国民年金の加入者であった人が障害状態になった場合
- 20歳前に初診日がある病気・ケガで障害状態になった場合
- 国民年金に加入していた人で、初診日に60歳以上65歳未満で日本国内に住んでいる方が障害状態になった場合
初診日に厚生年金(一般のサラリーマン)に加入していた場合は、その病気・ケガの程度により1級~3級の障害厚生年金が支給されます。
障害等級が1級または2級の場合は、障害厚生年金の他に、障害基礎年金も支給されます。
障害厚生年金 | 厚生年金加入者に支給 |
---|---|
障害基礎年金 | 国民年金、厚生年金、共済年金加入者に共通で支給 (ただし1級または2級) |
20歳前(国民年金に加入する前)に初診日がある場合
病気やケガで、20歳前に初診日がある場合は、20歳になった時に1級または2級に該当していれば障害基礎年金が支給されます。
この20歳前の障害基礎年金は、本人の前年所得が一定額を超えると支給制限があります。
事後重症制度
障害認定日においては障害等級に該当するほどの障害の状態になかった人が、障害認定日後65歳になる前(65歳の誕生日の前々日)までに障害等級に該当したときは、請求した翌月分から年金が支給されます。
65歳なる前に請求しなければ、いくら障害の状態が悪化しても、障害年金は支給されません。
障害基礎年金の額
障害基礎年金は、等級により定額となっています。
- 1級・・・・・・983,100円
- 2級・・・・・・786,500円
さらに、受給者に 18 歳未満の子どもがいると加算があります。
- 子1人・・・・・226,300 円
- 子2人・・・・・226,300 円 + 226,300 円
- 子3人・・・・・3 人目以降 1 人につき 75,400 円が加算されます。
障害厚生年金
障害厚生年金は、障害基礎年金のような定額制ではなく、報酬および加入期間の長さによって計算します。
(平均標準報酬月額× 7.5/1000× 平成15年3月までの被保険者期間の月数+平均標準報酬月額×5.769/1000×平成15年4月以後の被保険者期間の月数) ×1.031×0.978
※被保険者期間の月数が300に満たない場合は、300として計算します。
障害等級1級の場合は、上記の計算式×1.25となります。
さらに、受給者に65歳未満の配偶者がいる場合は、226,300円が加算されます。(障害等級1級または2級のみ)
障害等級3級の場合は、前述の計算式のとおりとなりますが、配偶者加算は行われません。
また、年金額が589,900円に満たない場合は、589,900円が補償されます。
区分 | 主な傷病名 |
---|---|
(1)目の障害 | 白内障、緑内障、ブドウ膜炎、眼球萎縮、癒着性 角膜白斑、網膜脈絡萎縮、網膜色素変性症など |
(2)聴覚、鼻腔機能、平衡機能、 そしゃく・嚥下機能、言語機能の障害 |
メニエール病、音感性難聴、突発性難聴、頭部外 傷または音響外傷による内耳障害、薬物中毒に よる内耳障害、外傷性耳下疾患、咽頭摘出後後 遺症、上下顎欠損など |
(3)肢体の障害 | 上肢または下肢の離断または切断障害、上肢ま たは下肢の外傷性運動障害、脳卒中、脳軟化 症、重症筋無力症、関節リウマチ、ビユルガー 症、脊髄損傷、進行性筋ジストロジー、変形性股 関節症など |
(4)精神の障害 | 老年期認知症、初老期認知症、老年性精神病、 脳動脈硬化症に伴う精神病、アルコール精神病、 頭蓋内感染に伴う精神病、躁鬱病、転換性精神 病、統合失調症、発達障害など |
(5)呼吸器疾患の障害 | 肺結核、じん肺、気管支喘息、慢性気管支炎、膿 胸、肺繊維症、慢性呼吸不全など |
(6)循環器疾患の障害 | 慢性心包症、リウマチ性心包炎、慢性虚血性心 疾患、環状動脈硬化症、狭心症、心筋梗塞、僧房 弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症、高血圧性心疾 患、高血圧性腎疾患など |
(7)腎疾患、肝疾患、糖尿病の障害 | 慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、 慢性腎不全、肝硬変、肝がん、糖尿病、糖尿病性 と明示された合併症など |
(8)血液・造血器、その他の障害 | 慢性腎炎、ネフローゼ症候群、慢性糸球体腎炎、 慢性腎不全、肝硬変、肝がん、糖尿病、糖尿病性 と明示された合併症など |
※病名だけで障害年金が認定されることはありません